食品に含まれるトランス脂肪酸は、多くの人々が気付かずに摂取している有害物質の1つです。
トランス脂肪酸は、食品の保存性や風味を向上させるために一部の食品メーカーが使用している化学物質であり、健康への影響が懸念されています。
本記事では、トランス脂肪酸の摂取による健康への影響について探っていきます。
トランスの意味は?
危険な油なの?
脂肪酸とは
脂肪には常温で固まる「脂(あぶら)」と、常温で液体の「油(あぶら)」があります。
肉の脂肪、牛乳の脂肪、魚の油、植物油など、見かけ上異なる脂肪にもほとんど脂肪酸が含まれています。
脂肪酸とは、脂質のおもな構成要素です。
他の様々な物質と結びつくことで脂質を形成します。
脂肪酸は、以下のような役割を持ち、人の健康にとって重要な存在です。
- エネルギー源(カロリー)になる
- 細胞膜やホルモン、核膜などの構成成分
- 皮下脂肪として臓器を保護
- 寒さからの保護
- 脂溶性ビタミン(A・D・E・K)の吸収を促進
脂肪酸は、大きく飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸に分類されます。
飽和脂肪酸
飽和脂肪酸とは、炭素間に二重結合を持たない脂肪酸のことを指します。
飽和脂肪酸を含む食品は以下のとおりです。
- 動物性脂肪
バター、チーズ、肉、豚肉、羊肉、鶏肉、ソーセージ、ベーコン、牛乳、クリーム - スナック菓子
チョコレート、チップス、ポップコーン、クラッカー、ビスケット - 揚げ物
フライドチキン、フレンチフライ、ドーナツ、揚げパン - その他
ココアバター、コーヒークリーマー、マーガリン
飽和脂肪酸は、炭素間に二重結合を持たないため、比較的化学的に安定しています。 不飽和脂肪酸と比較すると、酸化や過酸化を起こしにくくなっています。
不飽和脂肪酸
不飽和脂肪酸とは、炭素間に二重結合を含む脂肪酸のことを指します。
不飽和脂肪酸を含む食品は以下のとおりです。
- 植物油
オリーブオイル、アーモンドオイル、アボカドオイル、キャノーラオイル、グレープシードオイル、ヘンプシードオイル、フラックスシードオイル、サフラワー油、ソイオイル、サンフラワーオイル、コットンシードオイル - ナッツ
アーモンド、ピスタチオ、マカダミアナッツ、カシューナッツ、ピーナッツ、くるみ、ヘーゼルナッツ - シード
チアシード、亜麻仁、カボチャの種、ヘンプシード、サンフラワーの種、ナイジェルの種、アーモンド - 魚
サーモン、マグロ、サバ、マス、アンチョビ、イワシ - アボカド、オリーブ、チーズ、牛乳、エビ
不飽和脂肪酸は、化学的に比較的不安定です。これは、不飽和脂肪酸が炭素の結合の中で、水素の不足した二重結合と呼ばれるつながり方を部分的に持っているためです。この二重結合が反応性を持ち、酸化や過酸化反応を起こしやすくなります。
不飽和脂肪酸は2種類ある
不飽和脂肪酸には、炭素間の二重結合の構造が異なりにより、シス型とトランス型の2種類があります。
シス(cis)型
シス(cis):同じ側・こちら側
という意味です。
脂肪酸においては、炭素の二重結合を挟んで水素原子(H)が同じ側に位置していることを示します。
反芻動物(ウシ、ヒツジ、ヤギなど)の脂肪や乳製品中に微量に含まれています。
これらのトランス脂肪酸は、健康に影響を与えるという証拠はありません。
- 牛肉
- 羊肉
- 牛乳
消費者庁食品表示課 「脂質と脂肪酸のはなし」
天然の不飽和脂肪酸の多くはシス型で存在します。
しかし、牛や羊などの反芻(はんすう)動物では、胃の中の微生物の働きによって、トランス脂肪酸が作られます。そのため、牛肉や羊肉、牛乳や乳製品の中には微量のトランス脂肪酸が含まれています。
反芻動物:反芻とは“繰り返す”という意味。一度食べ胃の中に入れてから、再び口の中に戻し、ふたたび噛みなおすことです。
トランス(trans)型
トランス(trans):向こう側・反対側
という意味です。
脂肪酸の場合には、炭素の二重結合を挟んで水素原子(H)が反対側に位置していることを表します。
工業的に生産されたトランス脂肪酸は、主に加工・精製食品に含まれています。
これらのトランス脂肪酸は、過剰に摂取すると心臓病や脳卒中などの疾患を引き起こすことが知られています。
したがって、工業的に生産されたトランス脂肪酸の摂取量を減らすことが健康維持に重要です。
- マーガリン
- ショートニング
- ホイップクリーム
- パン
- ケーキ
- ドーナッツ
常温で液体の植物油から、半固体又は固体の油脂を製造する加工技術の一つである「水素添加」によってトランス脂肪酸を生成する場合があります。水素添加によって製造されたマーガリン、ファットスプレッド、ショートニングや、それらを原材料に使ったパン、ケーキ、ドーナッツなどの洋菓子、 揚げ物などにトランス脂肪酸が含まれています。また、植物油を精製する工程で、高温処理による脱臭を行う際に、植物に含まれているシス型の不飽和脂肪酸からトランス脂肪酸ができるため、サラダ油などの精製した植物油にも微量のトランス脂肪酸が含まれています。
消費者庁食品表示課 「脂質と脂肪酸のはなし」
トランス脂肪酸は、天然の植物油にはほとんど含まれていません。現在身近な食品の含まれている大部分のトランス脂肪酸は、液状の不飽和脂肪酸を固めるために、水素を添加して飽和脂肪酸に変化させる過程でできるものです。
トランス脂肪酸とは
トランス脂肪酸とは、炭素の二重結合を挟んで水素原子が反対側に位置するトランス型の不飽和脂肪酸のことを指します。
この脂肪酸は、植物油からマーガリンやショートニングなどを製造する際に生じるほか、植物油を高温にして脱臭する工程でも生成されます。
トランス脂肪酸には、天然に食品中に含まれているものと、油脂を加工・精製する工程でできるものがあります。
トランス脂肪酸が含まれる食品
以下は、トランス脂肪酸が含まれる一部の食品の例です。
- フライドポテト
- フライドチキン
- ドーナツ・クッキー・パイ・パンなどの揚げ物や焼き菓子
- マーガリン、ショートニングなどの人工的に作られた脂肪
- 加工肉製品、例えばベーコン、ハム、ソーセージなど
マーガリン、ショートニング
マーガリンやショートニング、マヨネーズ、コーヒークリームなど、この質の悪い植物性油脂もまた、身近な食品にたくさん含まれています。
たとえばマーガリン。なぜ体に悪いかは製造過程を知れば一目瞭然。酸化しやすい植物性オイルに水素を添加することで構造自体を変え、参加しにくい長持ちする油にしているのです。
もともとは液状の植物性オイルのはずのマーガリンが、バターのような固形状なのは、この特殊な加工のせい。安価なのが唯一のメリットで、体にとってはデメリットばかりです。
というのも、トランス脂肪酸は、非常に粘着性が高いうえ、そもそも自然界には存在しないため、私たちの体内でうまく代謝できません。その結果、血管や腸壁にこびりついて、ドロドロ血やアレルギー、ニキビなどの原因になりやすく、「必須脂肪酸」と呼ばれる良質で体に必要な油の邪魔をしてしまう点も、非常に悪質です。
確かに、肉の脂身やバターなどの動物性脂肪も、粘着性は高いのですが良質な油の邪魔をしないのがいいところ。さすがに自然界にもともと存在する油なだけあります。つまり、お菓子で使う油も、マーガリンやショートニングより、バターの方がずっと体にいいということ。洋菓子でも、素材にこだわった高級スイーツは、コンビニで買うお菓子よりずっと体にいいし、きちんと代謝できる油だから脂肪になりにくいのです。
各種の油脂にガスを混入して作ったラードの代用品「ショートニング」、マーガリンにはトランス脂肪酸が使用されています。これらを使ったスナック菓子、ビスケットやクッキー、食パン、フライドポテトなど加工食品に含まれています。プロセスチーズにも含まれています。非常に広範囲にわたって、とくに油を使った市販食品に含まれている可能性が高いといえます。
健康でいる条件として、体内に毒を入れないというのは基本中の基本。おやつを食べるなら、ナッツやドライフルーツ、果物など、できるだけ自然な食品を選んで食べてほしいと思います。
菓子パンは要注意!
ワーストメニューはずばり菓子パンです。
なぜ菓子パンがそんなに悪者なのか。まず主原料が小麦であること。水分がほとんどないこと。塩分たっぷりなこと。があげられます。そして何といっても菓子パンには質の悪い油がたっぷり使われているということ!質の悪い油とはトランス脂肪酸と呼ばれる自然には存在しない加工油で、マーガリンやショートニングに多く含まれています。トランス脂肪酸は悪玉コレステロールを増加させ、心臓病のリスクを高めたり、アトピーやぜんそく、花粉症などアレルギーの原因になることが指摘されています。
このように、菓子パンにはからだに良いものがひとつも入っていないといっても過言ではありません。栄養がゼロどころか、体の中の栄養素を使って代謝しなければならないため、食べるとマイナスになります。菓子パンをよく食べる人は、量を減らしましょう。体がかるくなってくるはずです。
血をドロドロにするお菓子を食べた後に、それがなかったことになるサプリメントを飲んだとしても、食べたものが体に与えた影響がなくなるわけではなく、腸や血液は確実に汚れます。
バランス栄養食品も要注意
怖いのは、バランス栄養食品をうたったり、厚生労働省から特定保健用食品のお墨付きをもらっているバランス栄養食にもトランス脂肪酸が含まれていることがあります。栄養バランスの良さを売りにしている固形クッキーの裏書を見てみてください。ショートニングが原材料に表記されているかもしれません。
加工食品を買うときは、裏書の原材料名を必ず確認し、マーガリンやショートニング、植物油脂の表示があるものはできるだけ避けましょう。
トランス脂肪酸の1日の摂取目安量
厚生労働省は、1日の総エネルギー摂取量に対してトランス脂肪酸の摂取量を1%以下に抑えるよう勧告しています。
総エネルギー摂取量の1%を約1,900 kcalとすると、この1%に相当するトランス脂肪酸の摂取量は約2グラム以下となります。
低トランス脂肪酸のマーガリン・ショートニング
パンに、たっぷりマーガリンを乗せるとおいしいですよね。
高脂血症、心疾患、糖尿病、肥満、アルツハイマー病などのリスクを増加させてしまうトランス脂肪酸。
トランス脂肪酸0のマーガリンはありませんので、低トランス脂肪酸のマーガリンやショートニングを選ぶことは健康的な選択です。
マーガリンやショートニングには、トランス脂肪酸以外にも、飽和脂肪酸や総脂質量が高いものもあります。そのため、健康的な食生活の一環として、バランスの良い食事を心がけることが大切です。
トランス脂肪酸0ゼロのフレッシュ・ポーション
コーヒーにフレッシュを毎回入れている、という方にはトランス脂肪酸0のものがおすすめです。
ちなみにコーヒーに入れる、ミルクのようなものには、以下のような呼び方があります。
メーカーは、メロディアン・スジャータ・マリーム・ネスレ・UCC・キーコーヒーなどがありますね。
- クリーム
- クリープ
- コーヒーフレッシュ
- ポーションミルク
- コーヒークリーム
トランス脂肪酸0ゼロのフレッシュ・ポーションを含む食品を選択することで、健康に配慮した食生活を送ることができます。
細胞にダメージ!?トランス脂肪酸のリスク
LDLコレステロールの増加
トランス脂肪酸は、悪玉コレステロールであるLDLコレステロールの量を増やすことがあります。LDLコレステロールは、血管内に蓄積し、動脈硬化を引き起こすリスクを高めます。
炎症の促進
トランス脂肪酸は、体内の炎症反応を促進することが知られています。
炎症は、慢性疾患や心臓病のリスクを高めます。
細胞の損傷
トランス脂肪酸は、細胞膜の構造を損傷することがあります。
これにより、細胞がダメージを受け、機能が低下する可能性があります。
心臓病のリスクの増加
トランス脂肪酸は、心臓病のリスクを増加させることが知られています。
トランス脂肪酸を多く含む食品を過剰に摂取すると、心臓病の発症リスクが高まる可能性があります。
心筋梗塞が起きやすくなる
トランス脂肪酸は、悪玉コレステロールを上昇させて動脈硬化を促進し、心筋梗塞が起きやすくなるのです。さらに、免疫機能を低下させて感染症や、がんなどのリスクを増やします。アレルギーや認知症を促進するというデータも発表されています。
トランス脂肪酸は、LDL(悪玉)コレステロールを増やすだけでなくHDL(善玉)コレステロールを減らす(心疾患のリスクを高める)ことが報告されています。
トランス脂肪酸は、動脈硬化などによる心疾患にかかるリスクを高めることが報告されています。
世界保健機関 (WHO) は、2003年に1日あたりのトランス脂肪酸の平均摂取量は最大でも総エネルギー摂取量の1%未満と勧告しています。しかし、2008年に最新の科学的知見を見直した結果、このレベルを考え直す必要があるかもしれないと報告しています。
消費者庁食品表示課 「脂質と脂肪酸のはなし」
ニューヨーク州は使用禁止に
安全摂取量はない
アメリカ・ニューヨーク州は、2006年12月に世界ではじめて自治体として、レストランでのトランス脂肪酸の使用禁止に踏み切りました。該当するマクドナルド、ケンタッキーフライドチキン、中国料理店などテイクアウトできるお店も含めてです。アメリカの他州、そして欧州でも、この措置に追随しています。
メーカーも規制
トランス脂肪酸の含有量を制限したり、自主規制に働くメーカーもあらわれています。アメリカの医学研究所のレポートでは、トランス脂肪酸の「安全摂取量」はない、とまでいっています。
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